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静岡大学教育学部の外山教授は、子供の不登校や引きこもりと住まいの関係の研究を通して、独自の住居学理論を確立してこられました。その理論の中核をなすのが「テリトリー形成力」という、一般的には聞きなれない概念です。
テリトリー、すなわち自分の「なわばり」という自己イメージを持てずに成長した子供に不登校や引きこもりという現象が多く見られることを、多くのフィールドワークから実証し、この能力の発達に配慮した住まいづくりを強く提唱されています。
「家に自分の居場所があることに確信が持てない、つまりテリトリー形成力が未発達のままの子供が増えています。子供だけでなく、家族一人ひとりの居場所がしっかりあること、そしてそれがバラバラではなく、有機的に結びついていること。このような家が理想の家だと思います。豊かな人間関係が背景にあって、それが現れるのが間取りなのです」。
そして、「人は自分のテリトリー(居場所)を確保してから次に他人との関係を自覚し、思いやることができるようになります。このような心の成長を助ける間取りの工夫が必要です」と語ります。

例えば、12畳のオープンな子供部屋があったとします。子供が成長すると、一般的には図の上のように6畳の部屋2つに仕切ってしまうのですが、外山先生の提案は、図の下のようなプランです。「片方の6畳を2つに分けて、3畳を2つ。ここにそれぞれベッドと机を置きます。そうすると、6畳がひとつ空きますね、ここを兄弟の共通の居間(キッズリビング)にします。そうすると、ここで兄弟のかかわりができるのです。ひとりの子どもが使う面積は3畳と6畳を合わせて9畳になります。6畳ふた間の12畳が9畳プラス9畳=18畳に使えるわけです。キッズリビングは居間の延長でもありますから、居間とダブルで計算すると、さらに多くのスペースを使うことになります」。
このように、いきなりドアのある個室を与えて家族から分離するのではなく、「ゆるやかであいまいな間仕切り」を工夫することで、徐々にテリトリー意識やプライバシー感覚の発達をうながすようにします。そして、いつも家族が集まってくるような「気持ちのいい空間=リビング」づくりの工夫も重要です。
単に、吹き抜けがあるとか、広々しているというような「空間」をつくるのではなく、子供の前で両親が生きいきと暮らす姿を示せるような「場」をつくる工夫が必要になるわけです。
そのためには、住居学、家族学そしてできれば社会学という智恵を身につけて、住まい方を考えていきましょう。
2008.05.20