
収納に関するまめ知識や“なるほど”情報をお届けします。

中高年夫婦の間で別々に眠るスタイルへの関心が高まっています。クローゼットやパーティションで空間をゆるやかに分けるなど、健康面の緊急事態なども想定し、気配の感じられる間取りが人気です。
そのコンセプトは『お互いを尊重したゆとりのある暮らし』で、住宅業界では夫婦別寝(べっしん)といった用語も使われ始め、高齢化とともにニーズが高まりつつあります。
「寝る」だけの部屋から「心地よく過ごす」部屋への変化は、間取りだけでなく、寝具や照明へのこだわりなど広範囲に及びます。
多くの市場調査でも、団塊世代が定年後にどのようなライフスタイルを求めているかを調べたところ、「夫婦別寝」というコンセプトが浮かび上がります。
夫婦仲が悪くて、というわけではなく、むしろ夫婦関係に前向きで、自分の個性やこだわりを大切にする傾向が強いことが分かっています。
こういった回答の背景には、団塊世代がこれまで暮らしてきた住宅が関係しています。高度成長期に最初に建てた家は、家の中で快適に暮らすといった発想はなく、家を建てる側も戸建てといえば2階建てで子供部屋があって、寝室にはベッドを置くといった間取りが一般的でした。
その後、子供が独立して余ったスペースの活用法として、ゆとりとくつろぎを感じられる新たなコンセプトとして「夫婦別寝」を提案するようになってきました。
「別寝」の設計は、 【1】個室の寝室を二つ作る「完全別室型」、 【2】広めの一部屋の中央にクローゼットなどを作りつけることで夫婦の生活空間を分ける「別スペース型」、 【3】家具などをベッドの間に置く「家具活用型」などがあります。

「完全別室型」なら相手が気にならず、空調の温度も好みに合わせることができます。
「別スペース型」「家具活用型」は、同じ部屋なので相手の気配を感じられることが利点です。体調が悪くなっても、すぐに気づいてもらえます。

リフォームを機に、別寝を選ぶ夫婦も増えています。図面はマンションリフォームの一例です。和室と南側の洋室をなくしてLDKを広く確保、そして夫婦別寝室で個室を設けました。
別寝のきっかけは、ご主人がパソコンを持ち込んで仕事をしたり、奥さまが寝る前に本を読むなどライフスタイルの違いから。奥さまは夫婦別寝について「とても気が楽」と満足の様子です。周囲に別寝を告げると「うらやましい」という声が大半と話されます。とはいえ、歳を重ねると健康に不安を感じることもあるため、お互いの気配が感じられる距離感は大切と感じているようです。
東京ガス都市生活研究所が昨年に発表した20歳以上の既婚者1432人を対象に行った「寝室空間」の実態調査によると、年齢が上昇するにつれて夫婦が別々に寝る割合が多くなっています。
40代は25%、50代は32%、60代は36%、70代では半数近い47%が「別の寝室で寝ている」と回答しました。

夫婦別寝にした理由については、夫婦間のライフスタイルの違いが大きく影響していることが分かりました。理由は複数回答で「就寝・起床時間の違い」(男56%、女57%)が最も多く、「どちらかが寝る前に寝室で読書やテレビ・音楽鑑賞をするから」(男57%、女48%)、「いびきや歯ぎしりなどが気になる。文句を言われるから」(男41%、女52%)などと続きます。

夫婦別寝の「良さ」は男女で異なるとらえ方をしており、男性は「自由」を、女性は「安眠」を重んじる傾向が強いようです。

最後に、健康に不安がある高齢夫婦は万一に備えて相手の気配が感じられるような工夫が必要です。体調が急変したとき、1階と2階に分かれて寝ていたために、異変に気づくのが遅れて命を落とす例もあります。

お互いの気配を感じながらも、自分一人の時間をリラックスして過ごせるような、プライバシーと安全面を両立させる工夫にも知恵を絞りましょう。 また、プライバシーを優先させたい場合は、完全別室にしたうえで、緊急時用のブザーを設置する方法もあります。
2009.08.24